残暑お見舞い申し上げます!フリーSS (配布終了。)
- アイスクリーム -
休日なので岩瀬と一緒に、買い物に出かけたは良いけれど…
予想以上の暑さに辟易していた―
「暑いな…」
「本当に…」
額に流れる汗を腕で拭いやり…
恨めしげに太陽を見上げた。
時間にして午後14時を回ったところ―
一番気温が上がる時間帯だ。
「…外警は偉いな…」などと呟きながら、街の雑踏の中を歩いていると―
「悠さん!ちょっとコッチへ…」
「基寿?」
ビルとビルの間の細道の前で岩瀬が石川に手招きする。
そこは、手招きする岩瀬の体がギリギリ通れるか?という位の細さで…
「基寿?ソコに入るのか…?」
「はい。この奥に良い所があるんですよ」
「・・・・」
石川は胡乱げな視線を送りつつも、岩瀬の後を付いていく。
すると ― 目の前には突如、広々とした空間が開け…
ビルの谷間にチョットした憩いの空間となる公園があった。
「ここは…」
「なかなかの穴場でしょう?」
「…よく知ってたな…」
「えぇ。この間、見つけたんですよ。アレクが…」
「…凄いな…アレク」
「あはは。ヤツは散策するのが趣味ですから。きっと、この辺は知り尽くしてると思いますよ?」
「そうなのか?」
「はい。で、あそこ…」
そう言って岩瀬が指差す方向に、一台のキャンピングカーが停まっていた。
「あれは…?」
「で、アレクが言うには、あそこのアイスが凄く美味しいそうで…」
「アイス?」
「はい。なんでも、産直のフルーツを使ったアイスクリームで…大きな果肉が入ってるらしいです」
「へぇ…。美味しそうだな…」
「じゃあ。早速、味見しますか!」
「あぁ」
二人はアイスクリームの店へと足を向けた。
「はい、いらっしゃいませ!!」
店員の元気な声に微笑んで、ショウケースの中を覗くと。
そこには沢山の種類のアイスクリームが並んでいた―
「…うわぁ…種類が多いな…」
「凄いですね…悠さん、どれにしますか?」
「え…っと…じゃあ、俺は『もものアイス』で。」
「じゃあ、俺は『いちじくのアイス』で、どっちも、Mサイズでお願いします。」
「はい。………『もものアイス』と『いちじくのアイス』。二つで600円です」
差し出されたアイスを手に取り、公園のベンチへと座る。
そして、一口。
「美味しい…!甘すぎなくて、しっかり桃の味がするし…」
「本当に…。こっちの無花果もサッパリしてるけど、味が濃厚で…」
パクリと食べた二人は感嘆の声を出す。
「悠さん、食べますか?」
「うん。基寿も食べるか?」
「はい!頂きますvv」
はい。と差し出された無花果のアイスを一口食べて…
「美味しいvv」と感想を漏らしていた石川は、隣で動かない岩瀬を不審げに見た。
すると―
岩瀬はニッコニコしながら口を開けて待っていて…
「…ばっ…!自分で食べろよ!!」
「やです。悠さんが食べさせてください!!」
「基寿…」
頑として口を開けて待っている2メートル近い大男…
その姿は、いくら人目が少ない穴場だといっても、かなり目立つ…。
次第に注目を浴びてきた事に、石川はサッと顔を赤らめて―
「自分で食べれないんだったら、分けてやらない。」
「…え?」
「基寿!早く食べないと溶けるだろう!!」
「………」
数瞬間だけ見つめあった、恋人達は。
岩瀬のスプーンが石川のアイスへ伸ばされ、岩瀬がおれる。という形で決着が付いたかに見えた。
が。
一瞬の隙を突いた岩瀬がチュッと石川の唇を掠め取り…
「ホント!悠さんのも美味しいですねvv」
「///基寿!!」
石川は真っ赤になって怒ろうとしたが。
恋人の余りにも無邪気な笑顔に溜息を一つ。
そして…
「お前のも美味しいよ…」
そう言って、今度は自分から唇を寄せた。
まだまだ、暑い日は続きますね…。
2006.09.03 UP
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